ACTION.1
「じーちゃんばーちゃんや子どもたちまで、家族全員で夜中まで働かなきゃ終わらないような仕事なんて、子どもに継がせられない。」
悩み・課題
高齢化による休耕地の増加に伴う生産量減
業務過多によるモチベーション低下
「じーちゃんばーちゃんや子どもたちまで、家族全員で夜中まで働かなきゃ終わらないような仕事なんて、子どもに継がせられない。」
原因
家庭選別
2021年現在においても、他地域の多くのみかん農家が行っている”家庭選別”。
毎日早朝から日が落ちるまで行う収穫作業、さらに深夜まで家族総出で完熟みかんを選別する作業が続きます。
※写真は一台だけ残っていた家庭選別機と、家庭選別の再現風景。(2021年撮影)
幼い頃から両親の働く様を見て育ち、みかん農家の苦労もわかった上で跡を継いだ。それでも、連日深夜でまでの家庭選別が続くと”まだ働かなければいけないのか”と思うことも少なくなかった。
家庭選別の苦労については、組合員共通の根深い課題でした。
親世代の「この苦労を子どもの代に引き継ぐのは心苦しい」
子ども世代の「大変なことが分かっているから継ぐ勇気を持てない」
それぞれの想いもあり、担い手の高齢化対策が喫緊の課題となりました。
そもそもなぜ、家庭選別が必要なのか。
家庭で選別をしてから選果場に持ち込むことを前提とした、以下の2つの工程に理由がありました。
完熟比率の高い果樹に生っているみかんをすべて収穫するため、収穫後に出荷基準以外のみかんをよける作業が発生する。
選果場の外観識別や糖度判別のシステムは、ある程度等級ごとに分けた状態のみかんを選別にかけることでクオリティを保つ仕組みになっている。
これらの原因を解消すれば、家庭選別を廃止することができると考え、以下の取り組みを行いました。
取り組み
収穫を見越した栽培フローの整備
・完熟比率の高い果樹に生っているみかんをすべて収穫することをやめ、”生果で出荷できないみかんを摘果で落としきる”という手法を取り入れました。
・摘果の際に選別を行うことで収穫時の作業が軽減され、家庭選別を行う必要がなくなります。すでに選別を行った状態で収穫するので、収穫した大半のみかんを直接選果場に持ち込めるようになりました。
選別ラインの強化
・選果場に設備を追加することで選別工程を強化し、(収穫を見越した栽培フローの整備効果と、選別ラインの強化効果を併せることで)家庭選別に頼らなくても選別の品質が保てるようになりました。
後継者・新規就農者が参入しやすい農業にするため、上記2点に注力しました。
結果
2013年に「出荷時における家族総出の選別作業」を廃止。
以降現在に至るまで、参加農家の家族に負担を強いることなく生産から出荷までを行っています。
この結果は、次世代が”継げる・継ぎたくなる農業”を目指す私たちにとっての確実な一歩目となりました。
マルケンみかんでは、選別機械が発達していない時代から、他の産地に比べて非常に厳しい基準を持って家庭選別を行っていたからです。
組合長(現、代表取締役 永石 睦巳)から「家庭選別をやめよう」と提案された時に一番に反対したのは実は私。
しかし同時に、自分自身も家庭選別の大変さを経験してきましたし、家庭選別をやめる方向に舵を切れたらどんなにすごいことかとも思っていました。
選別ラインを強化したことに加え、栽培フローの整備に組合員が一丸となって取り組んだ結果、家庭選別をやめてもお客様からの評価を得られたことが本当に嬉しいです。